日本書紀と万葉集

古事記に続く書物としては日本書紀と万葉集があります。
8世紀に書かれた書物ですが、ここではさらに明確に鍵についての描写がされています。

「日本書紀」では鍵が富の象徴だったことがわかります。
夫が新婦から鍵を手渡され、そこから稲穂の所有権が妻から夫に手渡されたことが書かれています。
そして、この鍵がどこからやってきたかというと、天から与えられた鍵だというのです。
そこが夫に渡ることで権力の譲渡という構造になっていることがわかります。

これがどういうことなのかというと、だいたい同じ時期に書かれた万葉集をのある歌を読み解くことでわかってきます。

万葉集の巻第九「雑歌」で妻との別れ話もないままに隣の家の若い珠名という娘に鍵を渡してしまう主人が登場します。

これはつまり家を管理する妻の権利を他の女に譲渡するという意味と解釈できます。
妻という立場は家のカギを管理することによって保証されているのです。これを男性が女性に渡すことによって求婚を意味していることがわかります。

そして同じような意味付けが西洋にも見られるようです。
昔話の集取をしていたグリムによる「主婦権」でカギは主婦の権力を象徴しているという指摘がされています。
グリムによると花嫁は結婚の日にカギを飾り付けて現れるそうです。そして腰帯にカギを吊るしておきます。
しかし、その権利を放棄して夫と離婚したいときはカギを外して夫に返さないといけない決まりになっていたそうです。